関数グラフの思い出 〜『曲線・グラフ総覧』〜

開催中「1行数式グラフコンテスト」の原点は高校時代

私の手元に『曲線・グラフ総覧』(聖文社、274ページ、1971年、4200円)という本があります。私がこの本を初めて手にしたのは高校2年生の時、37年前。

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高校の下校途中に毎日のように立ち寄っていた大型書店(八文字屋、山形県で最大)の数学書の棚に見つけました。箱入りの重厚な本を恐る恐る取り出して中を見てみると、見たことがないグラフが満載。

まさにタイトルの総覧にふさわしい本です。メインは2Dグラフで、その種類・分類の多さは圧巻の一言。中でも当時の私を引き付けたのは、グラフを描くまでのプロセスの詳細さと画像の精密さです。

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高校数学、関数のグラフを描くための方法として微分法が登場します。与えられた関数のグラフを精確に描くには、微分の他にいくつもの数値計算を必要とします。それらを統合して曲線が現れてきます。その手計算プロセスと作業手順はまさに職人技。

xとyの一本の数式と格闘することで、現れてくる曲線の姿。私は時間がかかる手作業のプロセスが好きでした。『曲線・グラフ総覧』にはその詳細がこれでもかと記載されています。よくまあこんな本を作り上げたものだと驚かされます。

私が知る限り、後にも先にもこの手の本を見たことはありません。当時手に入れることができなかったあこがれの本を手に入れたのは10年前。

いま好きなときに、憧れだった本を取り出しては思い存分眺めています。

電子計算機が普及していなかった1971年にこの精密なイラストが描けたことに驚きを禁じ得ません。50年後のいま、最新のM1Mac、UNIX、そしてPythonが液晶画面に高精度な曲線を一瞬で描き出してくれます。

『曲線・グラフ総覧』とM1Macに描かれた同じ陰関数の曲線を眺めながら思うことは、変わりゆく技術の世界と変わらない数学の世界です。

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